「継続は力なり」は正しいのか
「継続は力なり」という言葉は、勉強や仕事、運動などさまざまな場面で使われます。実際、読書や語学学習、執筆、運動、資産形成のように、長い時間をかけて少しずつ成果が積み上がる活動は少なくありません。一度だけ大きな努力をするよりも、一定の行動を繰り返すことが重要になる場面は多くあります。
しかし、「継続が重要である」と理解していることと、実際に継続できることは別の問題です。新しい習慣を始めても数日でやめてしまったり、目標を立てても日々の行動につながらなかったりすることは珍しくありません。こうしたとき、「自分は意志が弱い」「根気がない」と考えてしまう人もいるでしょう。
では、続けられる人と続けられない人の違いは、本当に意志の強さだけで説明できるのでしょうか。心理学や行動科学では、目標をどのように設定するか、行動するタイミングを事前に決めているか、同じ状況で行動を繰り返しているか、進捗を確認しているか、そしてその行動を自分自身がどのように意味づけているかといった要因が研究されてきました。
たとえば、目標設定そのものには行動変容を促す効果が確認されていますが(Epton et al., 2017)、目標を立てるだけで行動が続くとは限りません。目標を具体的な行動へ移す「実行意図」、反復によって自動性が高まる「習慣形成」、進み具合を確認する「進捗モニタリング」、そして自分なりに行動の価値を理解する「自律的動機づけ」など、継続を支える要因は一つではありません。
本記事では、物事を続けることを根性だけの問題として考えるのではなく、続けやすい条件をどのようにつくれるのかを整理します。そのうえで最後には、「どうすれば続けられるか」だけでなく、限られた時間や労力を考えたときに、そもそも何を長く続ける価値があるのかという、人生戦略の問題についても考えていきます。
継続するには、まず「何を目指すのか」を具体化する
何かを長く続けようとするとき、最初に考えたいのは「どれだけ頑張れるか」ではなく、そもそも何を達成しようとしているのかが明確になっているかという点です。「英語を頑張る」「運動を続ける」といった目標は方向性としては分かりやすいものの、どのような状態を目指しているのかは曖昧なままです。
目標設定が行動変容にどの程度影響するのかについて、141論文、16,523人を対象としたメタ分析があります。この研究では、目標設定を行った場合、目標設定を行わなかった場合と比べて行動変容が促され、平均効果量はd = .34でした(Epton et al., 2017)。効果の大きさとしては突出して大きいわけではありませんが、「何を目指すか」を定めること自体が、その後の行動に一定の影響を与えることを示しています。
ただし、どのような目標でも同じように機能するわけではありません。このメタ分析では、目標の難易度などによって効果の大きさが異なることも示されました。つまり、「目標を立てればよい」という単純な話ではなく、どのような目標を設定するかも重要です。
たとえば「英語を頑張る」という目標であれば、「海外のニュースを英語で読めるようになる」「仕事で必要な英文を自分で理解できるようになる」といったように、自分が何を実現したいのかを考えることができます。ここで示した具体化の仕方そのものが科学的に最適だという意味ではありません。重要なのは、「続けること」自体を目標にするのではなく、その先にどのような状態を目指しているのかを明確にすることです。
目標を設定することと、将来の自分をどのように思い描くかも、似ているようで異なる問題です。未来を前向きに思い描くことが目標達成にどのように関係するのかについては、「前向きな未来を思い描くと人生は変わるのか――目標達成の心理学から考える未来の描き方」で詳しく検討しています。
もっとも、目標が具体的になったからといって、その行動が自然に始まり、そのまま続くわけではありません。「何を目指すか」が決まった後には、それを日々の生活のなかで実際の行動へ移す必要があります。目標があることと、その目標を行動に変えることは別の問題です。そこで次に重要になるのが、「いつ、どのような状況で行動するのか」をあらかじめ決めておくという考え方です。
「やろうと思う」を「いつ、何をする」に変える
目標を具体的にしたとしても、それだけで実際の行動が始まるとは限りません。「運動を続けたい」「毎日勉強したい」と考えていても、日常生活のなかでその都度「今からやるか」「今日はやめておくか」と判断していると、目標と行動の間に距離が残ります。そこで重要になるのが、目標を「いつ、何をするか」という具体的な行動へ変えることです。
この考え方は、心理学では「実行意図(implementation intentions)」と呼ばれています。実行意図とは、単に「○○をしよう」と決めるのではなく、「ある状況になったら、この行動をする」という形で、行動する機会と行動そのものをあらかじめ結びつけておく方法です。一般には、「状況Yになったら、行動Xをする」というif-then形式で表すことができます。
たとえば、「運動を続けよう」という目標だけでは、いつ運動するのかが決まっていません。これを「夕食を終えたら10分歩く」と決めれば、「夕食を終える」という状況が、その後に歩くためのきっかけになります。これは実行意図を日常生活に当てはめた一例であり、「夕食後に10分歩く」という方法自体が最適だと示されたわけではありません。
実行意図について94の独立した検定を統合したメタ分析では、目標達成に対してd = .65という中程度から大きい効果が確認されています(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。つまり、「目標を達成したい」と考えるだけでなく、その目標に向けた行動をどのような状況で実行するのかまであらかじめ決めておくことが、目標達成を後押しする可能性があります。
その理由の一つは、行動する場面になってから毎回判断する必要を減らせることにあります。「今日は運動するべきか」「今から勉強するべきか」とその都度考えるのではなく、特定の状況と行動を結びつけておけば、その状況が行動を思い出す手がかりになりやすくなります。言い換えれば、「やるかどうか」を何度も決めるのではなく、「いつ、何をするか」を前もって決めておくという発想です。
もっとも、実行意図を設定すれば必ず行動を続けられるわけではありません。実行意図は、そもそも本人がその目標を達成したいと考えていることを前提として機能するものであり、目標そのものへの意欲が乏しい場合まで万能に補える仕組みではありません。また、この研究が主として扱っているのは目標達成であり、実行意図だけで長期的な継続や習慣形成のすべてを説明できるわけでもありません。
実行意図によって行動を始めやすくなったとしても、その行動を何度も繰り返し、生活のなかに定着させられるかは別の問題です。次に考える必要があるのは、一度の行動を反復することで、どのように習慣が形成されていくのかという点です。
習慣化では「何日続いたか」だけを気にしない
何かを習慣にしようとすると、「何日続ければ習慣になるのか」が気になるものです。しかし、習慣形成を考えるうえでは、単に連続日数だけを見るよりも、同じような状況で行動を繰り返すことで、その行動がどの程度自動的になっていくかを見ることが重要です。
習慣形成に関する研究では、参加者が自分で選んだ食事、飲料、活動に関する行動を、一定の状況と結びつけて繰り返しました。たとえば「朝食後に水を飲む」といったように、特定の状況と行動を結びつけ、その後の自動性の変化を追跡しています。ここでいう「自動性」とは、毎回強く意識したり考え込んだりしなくても、その状況になると行動が起こりやすくなる程度を指します。
その結果、行動を反復するにつれて自動性は高まっていきました。ただし、その高まり方には大きな個人差がありました。自動性が最終的な水準の95%に達するまでの推定期間は、18日から254日まで大きくばらついていました(Lally et al., 2010)。この結果は、習慣形成に必要な期間を一つの数字だけで表すことの難しさを示しています。
そのため、「21日続ければ習慣になる」といった固定的な日数を、すべての行動にそのまま当てはめることには注意が必要です。この研究は「21日説」そのものを直接検証したものではありませんが、少なくとも、習慣が形成されるまでの期間には行動内容や個人によって大きな違いがあることが示されています。習慣形成は、一定期間を耐えれば一律に完成するものではありません。
もう一つ注目されるのは、1回だけ実行機会を逃したことが、その後の習慣形成過程に実質的な影響を与えなかったという結果です。これは、「1日できなかったら、それまでの努力が無駄になる」という考え方を支持するものではありません。ただし、この結果から「何日休んでも問題ない」「継続日数は重要ではない」と一般化することもできません。
ここから実生活への示唆を考えるなら、習慣化の成功を「一度も途切れなかったか」だけで評価しない方がよいでしょう。連続記録が途切れたことに過度にこだわるよりも、次の機会に再び同じ行動へ戻ることの方が、長期的な反復という観点では重要です。これは研究結果そのものではなく、その知見を日常生活へ応用した考え方です。
つまり、習慣化では「何日続いたか」だけでなく、一定の文脈で行動を繰り返し、自動性が徐々に高まっているかを見る必要があります。そして、行動を繰り返すだけでなく、その進み具合を自分で確認できれば、継続を支える別の手がかりにもなります。次に、進捗を記録し、確認することが目標達成にどのように関係するのかを考えます。
進捗を記録すると目標達成につながりやすい
目標を決め、行動を始めたとしても、その後の進み具合が分からなければ、「予定どおり進んでいるのか」「やり方を変える必要があるのか」を判断しにくくなります。そこで重要になるのが、目標に対して現在どの位置にいるのかを確認する「進捗モニタリング」です。
進捗モニタリングとは、目標と現在の状態を照らし合わせながら、どこまで進んだのかを継続的に把握することです。たとえば、運動した日をカレンダーに記録する、勉強した時間を手帳に残す、貯蓄額の推移を確認するといった行動は、その応用例として考えられます。重要なのは記録すること自体ではなく、目標に対する現在地を把握できるようにすることです。
進捗モニタリングの効果について、138研究、19,951人を統合したメタ分析があります。この研究では、進捗を確認するよう促す介入によって、実際にモニタリングする頻度が増加しました。さらに、目標達成についても平均d+ = .40の効果が確認されています(Harkin et al., 2016)。つまり、目標を設定するだけでなく、その後の進捗を確認することが目標達成を後押しする可能性があります。
さらに興味深いのは、モニタリングの方法によって効果の大きさに違いがみられたことです。進捗を頭のなかで確認するだけでなく、物理的に記録した場合には、目標達成への効果が大きくなる傾向が確認されました。また、進捗の結果を他者へ報告したり、公開したりする場合にも、効果が大きくなる傾向がみられました。
ここから日常生活への応用を考えるなら、「目標→行動→記録→確認」という循環をつくることが一つの方法になります。たとえば「週に3回運動する」という目標を立てたなら、実際に運動した日を記録し、週末に目標に対してどの程度実行できたのかを確認します。記録にはカレンダー、手帳、アプリなどさまざまな方法が考えられますが、この研究から特定の記録方法が最も優れていると結論づけることはできません。
また、進捗を記録すれば必ず物事を継続できるわけでもありません。このメタ分析が直接検討している中心的な結果は目標達成であり、「継続」そのものと完全に同じ概念ではない点にも注意が必要です。それでも、目標を立てたままにせず、自分が実際にどこまで行動できているのかを確認することは、目標に向けた行動を調整する手がかりになります。
ただし、目標が明確で、行動するタイミングを決め、進捗まで記録できたとしても、「なぜ自分はこれを続けるのか」という理由が本人にとって意味を持たなければ、長期的な行動を考えるうえでは別の問題が残ります。次に、行動を続ける理由と動機づけの関係を考えます。
「なぜ続けるのか」を自分なりに理解する
目標を決め、行動するタイミングを設定し、進捗を記録できたとしても、「なぜ自分はこれを続けるのか」が本人のなかで十分に納得できていなければ、長期的な行動を考えるうえでは別の課題が残ります。そこで重要になるのが、その行動を自分自身がどのような意味や価値と結びつけているかという視点です。
自己決定理論では、行動の動機づけを、単に「やる気があるか、ないか」だけで捉えません。そのなかで重視されるのが「自律的動機づけ」です。これは、外から強制されて仕方なく行うのではなく、自分自身がその行動の価値や意味を理解し、ある程度納得して取り組んでいる状態を指します。
ここで注意したいのは、自律的動機づけが「好きなことだけをする」という意味ではないことです。たとえば、資格試験の勉強そのものは楽しくなくても、「この資格を取ることで仕事の選択肢を増やしたい」と本人がその価値を認識しているなら、行動の理由は自分自身の目標と結びついています。楽しいかどうかだけでなく、「自分にとってなぜ重要なのか」を理解していることがポイントです。
健康領域を中心とした184の独立データセットを統合したメタ分析では、自律的動機づけや、自律性・有能感・関係性といった心理的欲求の充足が、望ましい健康関連行動や健康アウトカムと関連していました(Ng et al., 2012)。この結果は、外から「やらなければならない」と求められるだけでなく、本人がその行動の意味を理解していることが、行動を考えるうえで重要であることを示唆しています。
実生活に当てはめるなら、「資格を取らなければならない」とだけ考えるのではなく、「この資格を学ぶことで、自分は何をできるようになりたいのか」「将来の選択肢をどう増やしたいのか」と問い直すことができます。これは、外から与えられた目標を無条件に受け入れるのではなく、自分の人生のなかでその行動をどのように位置づけるかを考えることでもあります。
もっとも、この研究は主として健康領域を対象としたメタ分析です。そのため、勉強、仕事、執筆などあらゆる活動について、「自律的動機づけがあれば長期間継続できる」と一般化することはできません。また、自律的動機づけと望ましい行動との関連が確認されていても、それだけで継続が因果的に保証されるわけではありません。
それでも、継続を考えるときに、方法や習慣だけでなく、「なぜ自分はこれを続けたいのか」を言葉にできるかを確認することには意味があります。目標、実行のきっかけ、反復、進捗確認に加えて、自分なりの価値づけまで含めて考えることで、「続けやすい仕組み」をより立体的に捉えることができます。
5つの研究から「継続しやすい仕組み」をつくる
ここまで見てきた研究をまとめると、物事を続けるためには「強く決意する」だけでなく、目標を定め、行動する状況を決め、反復し、進捗を確認し、その行動の意味を理解するという複数の視点から考えることができます。
ただし、ここで紹介する5段階は、5本の研究によって一つの「継続モデル」として検証されたものではありません。それぞれ異なる研究から得られた知見を、実生活で活用しやすいように本記事で整理したものです。したがって、以下の順序や組み合わせ自体が科学的に最適だと確認されているわけではありません。
STEP 1 何を目指すのか決める
最初に、「続けること」ではなく、その先で何を実現したいのかを考えます。目標設定には行動変容を促す効果が確認されています(Epton et al., 2017)。たとえば英語学習を1年間続けたいのであれば、「英語を毎日勉強する」ことだけを目標にするのではなく、「海外のニュースを英語で読めるようになる」など、継続した先に何を実現したいのかを考えます。
STEP 2 いつ行動するか決める
次に、目標を日々の行動へ変えます。実行意図の研究から考えると、「英語を勉強する」と決めるだけでなく、「朝食を終えたら英語を勉強する」のように、特定の状況と行動を結びつける方法が考えられます(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。ポイントは、その場になってから毎回「やるかどうか」を考えるのではなく、行動するきっかけをあらかじめ決めておくことです。
STEP 3 一定の文脈で繰り返す
一度行動できたら、それを反復します。習慣形成の研究では、一定の状況と結びつけて行動を繰り返すにつれて、自動性が高まることが示されています(Lally et al., 2010)。英語学習なら、「朝食後」という同じような状況で学習を繰り返すことが応用例として考えられます。1日できなかっただけで失敗と考えるのではなく、次の機会に再び行動へ戻ることも、長期的な反復を考えるうえでは重要です。
STEP 4 進捗を確認する
続けているつもりでも、実際にどの程度行動できているのかは記憶だけでは把握しにくいことがあります。進捗モニタリングには目標達成を促す効果が確認されているため(Harkin et al., 2016)、学習した日や時間などを記録し、定期的に確認する方法が考えられます。重要なのは記録そのものを目的にするのではなく、目標に対して自分がどこまで進んでいるのかを把握することです。
STEP 5 なぜ続けるのかを理解する
最後に、「なぜ英語を学ぶのか」を自分自身に問い直します。海外の情報を直接読みたい、仕事の選択肢を増やしたいなど、その活動が自分にとってどのような価値を持つのかを考えます。健康領域を中心とした研究では、自律的動機づけと望ましい行動・アウトカムとの関連が示されています(Ng et al., 2012)。ここから、「やらなければならない」だけでなく、自分にとって続ける意味を理解するという視点を取り入れることができます。
この英語学習の例は、5本の研究がそのまま検証した方法ではなく、それぞれの知見を組み合わせた応用例です。また、5つの条件をすべて完璧に整えなければ物事を続けられないわけでもありません。むしろ、続かなくなったときに「自分には継続力がない」と考える前に、目標、行動のきっかけ、反復する状況、進捗確認、続ける理由のどこに改善できる余地があるのかを見直すための視点として利用できます。
そして、ここでもう一つ考える必要があります。続けやすい仕組みをつくれるようになったとしても、その活動を本当に長く続ける価値があるかどうかは別の問題です。継続する方法を考えた次には、「何を継続するのか」という選択そのものを考える必要があります。
大切なのは「続ける方法」より「何を続けるか」である
ここまで見てきたのは、目標を具体化し、行動する状況を決め、反復し、進捗を確認し、自分なりの意味を持たせることで、物事を続けやすくするための考え方です。しかし、ここで一段視点を上げる必要があります。「継続できること」と「継続すべきこと」は同じではありません。
ここまで紹介した5本の研究は、目標設定や習慣形成、進捗確認、動機づけなどについて検討したものであり、「人生で何を長く続けるべきか」を直接明らかにした研究ではありません。したがって、ここから先は、それらの知見を人生戦略という観点からどう考えるかという応用・考察です。
人生には、時間、注意、体力、お金など、限りのある資源があります。ある活動を毎日1時間、10年間続けるなら、その時間は別の活動には使えません。つまり、継続とは単に同じ行動を繰り返すことではなく、特定の対象へ自分の資源を長期間配分し続ける選択でもあります。
この視点に立つと、「どうすれば続けられるか」だけでは十分ではありません。「この活動は、自分の限られた時間を継続的に使うだけの価値があるのか」「続けることで何を得て、その代わりに何をあきらめているのか」という問いも必要になります。
たとえば、始めた当初は意味のあった資格勉強でも、仕事や生活の状況が変われば、目標を修正した方がよい場合があります。何年も続けてきた活動でも、現在の自分にとっての価値が小さくなっているなら、やり方を変えたり、いったんやめたりすることが合理的な選択になることもあります。これは「続かなければすぐに諦めればよい」という意味ではありません。重要なのは、継続そのものを無条件に善としないことです。
限られた時間を何に配分するかという問題は、単純な効率化だけでは判断できません。より短時間で多くのことをこなせたとしても、それが必ずしも満足や幸福につながるとは限らないからです。この点については、「タイパ・コスパを追求すると幸せになれるのか――効率化と幸福の研究から考える人生の資源配分」で詳しく検討しています。
「継続は力なり」という言葉は、続けること自体に価値があるようにも聞こえます。しかし人生戦略として考えるなら、問うべきなのは継続年数だけではありません。継続の価値は、どれだけ長く続けたかだけでなく、何に自分の時間や資源を配分し続けたかによって決まります。だからこそ、続ける方法を身につけることと同時に、何を続けるのかを選び直すことも重要になります。
継続とは、意志の強さではなく「続けやすい仕組み」をつくることである
「継続は力なり」といっても、続けられるかどうかを意志の強さだけで説明する必要はありません。ここまで見てきた研究からは、物事を続けるための行動を、いくつかの側面から設計できることが分かります。
まず、何を達成したいのかという目標を具体化します(Epton et al., 2017)。次に、「いつ、何をするか」をあらかじめ決め、目標を実際の行動へ移しやすくします(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。さらに、一定の文脈で行動を繰り返すことで習慣形成を促し(Lally et al., 2010)、進捗を記録・確認して目標に対する現在地を把握します(Harkin et al., 2016)。そして、その活動が自分にとってなぜ重要なのかを考えることも、動機づけという観点から重要です(Ng et al., 2012)。
これらは一つの統合された「継続モデル」として検証されたものではなく、それぞれ異なる研究から得られた知見です。そのため、5つを実行すれば必ず続けられるわけではありません。それでも、継続できなかったときに、すぐに「自分は意志が弱い」と考えるのではなく、目標、行動のきっかけ、反復する環境、進捗確認、続ける理由という「行動の設計」を見直すことはできます。
そして、もう一つ忘れてはならないのが、何を続けるのかという選択です。人生の時間は有限であり、すべてのことを長く続けることはできません。ある活動を続けることは、そこへ時間や労力を配分し続けることでもあります。
したがって、目指すべきなのは「継続力そのものを最大化すること」ではありません。自分にとって長期的に価値のある活動を選び、そこへ限られた時間を継続的に配分できるようにすることです。「継続は力なり」という言葉が意味を持つとすれば、その力は意志だけから生まれるのではなく、続けやすい仕組みと、何を続けるかという選択の両方から生まれると考えた方がよいでしょう。

